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2021.01.21

コロナで大混乱⁉️ 2020年のコンテナ海運市況を振り返る [Shippio レポート]

2020年1月、中国・武漢で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)。またたく間に世界中に広がったその感染により、私たちの日常生活や経済活動は大きく脅かされました。

 

もちろん、物流業界も例外ではありません。

今回は、新型コロナウイルスがサプライチェーンへどんな影響を及ぼしたのか、特にその混乱が大きかった2020年のコンテナ海運市況を振り返ります。

 

増える「モノ」 戻らぬ「ハコ」に 足りぬ「スペース」

 

2020年のコンテナ海運市況を、大まかな流れで見てみましょう。

 

1月、武漢市で新型コロナウイルスの感染が発覚すると、中国における生産活動が軒並みストップ。中国からの荷動きは大幅に落ち込みました。

 

例年、コンテナ船社は、中国からの出荷がストップする旧正月に合わせて「ブランクセーリング」と呼ばれる減船・減便を実施します。

しかし、2020年はコロナの影響で荷動きの落ち込みはしばらく続くと予測。3大アライアンスは旧正月以降も、10〜20%ほどの減便体制を続けました。

 

しかし、感染のすばやい封じ込めに成功した中国は、3月には工場での生産活動を復旧させ、遅れていた荷動きを取り戻します。

「世界の工場」の名にかけたその回復は想定よりはるかに早く、勢いのあるものでした。船会社は慌てて船腹供給を増やしたものの、需要の盛り上がりに追いつきません。

 

5月には前年同月比19%減だった北米航路の荷動きは、コロナ禍の反動もあり7月には前年比プラスに浮上。8〜10月の「クリスマス商戦」や「国慶節前の駆け込み出荷」も後押しし、北米路線の荷動きは右肩上がりで伸び続けました。

 

さらに春以降、欧米各国でロックダウンや外出規制が行われ、人々の消費が「サービス」から家具・家電などの「モノ」にシフトしたことも、荷動きの急増に拍車をかけました。

10月には、アジア発米国向け海上コンテナ輸送量は単月実績で過去最高を更新したのです。

 

コンテナが北米から戻らない⁉

 

しかし、その頃アメリカでは、急増する輸入貨物に処理能力が追いつかない、という事態が発生していました。

 

港湾では、3月から始まったロックダウンによる人員削減や労働者不足により、荷役効率が低下。内陸への輸送においても、急増する貨物に対応できず、鉄道・トラックの遅延が相次いでいたのです。

 

これにより空コンテナが北米から戻ってこないという事態に。

コンテナ不足は、北米航路におけるスケジュールの乱れやコンテナ船運賃の急騰を招きます。

 

グラフ:中国・東アジアからアメリカ西海岸への40ftコンテナ船運賃指数 (出典:Freightos Baltic Index

 

さらに、「中国↔米国」の長期航路に回されたコンテナが、他の航路に行き届かないという悪循環が生まれ、サプライチェーンの混乱は世界中に波及していきます。

 

秋頃には、

「コンテナもスペースも不足していて、コンテナ船の運賃が2〜3倍に跳ね上がった」

「荷役遅延によりスケジュール遅延が頻発」

「船会社が北米航路を優先させ、アジアの港を抜港している」

・・・などの悲痛な声が、欧米だけでなくアジアのパートナー各社からも聞こえてくるようになりました。

 

コンテナや船の生産も低迷

さて、「コンテナが足りないのなら、新しいコンテナをどんどんつくって補充すればいいのでは?」という声が聞こえてきそうです。

しかし、残念ながらそう簡単にもいかないのが現状です。

 

2019年から2020年上期の新造コンテナ生産量は、米中貿易摩擦による先行きの不安定さを反映し、低下傾向にありました。

くわえて、

・コロナの影響で中国のコンテナ生産工場がストップ

・コロナによる需要減を想定していた船会社・リース会社が上期の発注を控えた

 

などにより、2020年のコンテナ生産量は低迷。夏以降、需要が急増するも、生産量の回復が追いつきませんでした。

 

また、コンテナ船そのものの生産も、2020年は歴史的な低水準でした。

 

・コロナ禍で荷動きの見通しが不透明だった

・2050年の温室効果ガス削減目標に向けて次世代環境船の商品化が検討されており、船会社が発注をとどまって様子を見た

 

などの理由により、発注が低迷したためでした。

 

この新造コンテナ&コンテナ船生産量の低迷が、サプライチェーンの混乱とあいまってコンテナ不足に拍車をかけたのです。

 

年が明けても続くコンテナ不足

さて、以上が「歴史的な大波乱」というべき2020年のコンテナ海運市況の概要です。

 

そして、この混乱は年が明けた現在もなお続いています。

 

米国西岸のロサンゼルス・ロングビーチ両港では、1/7時点で、計33隻のコンテナ船が入港待ち状態にあります。シャーシ不足やバース不足も深刻で、年末までは10日未満だった停泊日数も、平均10日以上と長期化しているとのこと。

 

空コンテナが戻らないため、北米航路はじめ各航路のスペース確保は依然として難しく、我々フォワーダーにとっても、厳しい状況です。

 

運賃に関していえば、北米航路は9月に頭打ちし、高止まりが続きますが、欧州航路や南米航路も年末年始にかけて急高騰。

 

ヨーロッパでは、荷主団体とフォワーダー協会が「コンテナ船社の一方的な運賃値上げは、契約違反では」と、欧州委員会(EC)に調査を要請する事態に。中国やタイ、マレーシアなどアジア各国でも政府介入を求める同様の動きが起きています。

 

下のグラフは、中国→日本の主要港のコンテナ船運賃の伸び率を表したものですが、10月から12月にかけて、航路によっては価格が30倍にもなっていることが分かります。

 

 

グラフ:中国→日本の20FTコンテナ海上運賃伸び率(2020年8月〜2021年1月、当社調べ)

 

旧正月もコンテナ船ほぼフル稼働

さて、今後、この世界的な混乱はどうなっていくのでしょう。

 

まずは、2/12〜26の旧正月に注目です。

船会社は、この時期、例年であれば2割程度実施するブランクセーリング(減便・減船)を、北米航路においては2〜4%程度に抑え、空コンテナの回漕を急ぎます。

 

また、感染者が世界的に増え続けているなか、各港の港湾能力がどこまで復活するのかが問われています。

 

さらに人々の消費動向。

欧米では段階的にワクチン接種を進めていますが、サービスからモノに、そしてeコマース中心にとシフトした各国の「巣ごもり消費」は、しばらく続くのではないでしょうか。

 

専門家の中には、コンテナ不足と海上運賃の高騰は、旧正月後の2〜3月にはピークを迎え、徐々に改善傾向に向かうのでは、との見方もありますが、年末年始の伸び率を見ると、すぐに運賃が従来の価格まで戻ることは難しいように思われます。今年前半は、コンテナ船会社が船腹供給の手綱を握り、需要の落ち着きとともに、運賃もゆるやかに下降していくのではないでしょうか。

 

厳しい状況は続きますが、我々も市況の動向に注視しつつ、お客様にとって最適なサプライチェーン戦略の構築に懸命に努めてまいります。

国際輸送に関するご相談・お見積りのご依頼など、ぜひShippioまでお気軽にお問い合わせください。

 

Reference

Top stories of 2020: Inside ocean shipping’s wild ride
(American Shipper、2020年12月29日)
https://www.freightwaves.com/news/top-stories-of-2020-inside-ocean-shippings-wild-ride

『2020年版 世界のコンテナ輸送と就航状況』
(日本郵船株式会社 調査グループ編纂、2020年12月14日発行)
http://www.jseinc.org/books/nyk_research/container/

『【激変・コロナ禍の国際物流】 郵船調査「今年の不足深刻化招く」 新造コンテナ2年連続急減、米中摩擦・コロナで』
(Daily Cargo電子版、2020年12月17日)
http://www.daily-cargo.com/new/news/143508/

コンテナ船供給動向、新造発注残 歴史的な低水準。発注船型、二極化へ
(日本海事新聞、2021年1月5日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=263718

コンテナ船、2020回顧・2021展望。コロナ禍の低迷一転。空前の活況。コンテナ不足深刻
(日本海事新聞、2021年1月5日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=263720

LA・LB港、コンテナ滞船 長期化。貨物急増で処理追い付かず
(日本海事新聞、2021年1月12日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=263922

『【激変・コロナ禍の国際物流】 主要コンテナ港で船混み深刻化 沖待ち30隻、スケジュールも大幅遅延』
(Daily Cargo電子版、2020年11月17日)
http://www.daily-cargo.com/new/news/142910/

Trans-Pacific boom likely to last until March or longer
(American Shipper、2020年12月4日)
https://www.freightwaves.com/news/container-import-boom-likely-to-last-into-march-or-longer

『欧州の荷主・フォワーダー団体 運賃・スペース不足問題で調査・対応要請』
(Daily Cargo電子版、2021年1月8日)
http://www.daily-cargo.com/new/news/143845/

『コンテナ運賃高騰続く。荷主の反発強く政府介入も』
(日本海事新聞、2021年1月12日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=263892

コンテナ運賃、調査求める動き広がる、荷主、一方的値上げに不満
(日本海事新聞、2021年1月8日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=263868

Liners highly unlikely to slash service for Chinese New Year
(American Shipper、2021年1月5日)
https://www.freightwaves.com/news/liners-highly-unlikely-to-slash-service-for-chinese-new-year

2021 freight predictions — Freightonomics
(FREIGHT WAVES、2021年1月6日)
https://s29755.pcdn.co/news/2021-freight-predictions-freightonomics